電力市場の「新たな収益機会」を理解する! 系統蓄電ビジネスの理解から、市場、そして法務の理解まで
再生可能エネルギーの大量導入は、日本の電力市場に「質的な大転換」をもたらしました。特に卸電力市場では、1日の中での価格差(ボラティリティ)が2018年の約4円から現在では約20円へと劇的に拡大 。この巨大な価格変動を収益化する「電力市場取引ビジネス」が、今まさに立ち上がっています。
しかし、この新たな機会の盛り上がりに対して不足しているのが、系統蓄電に関する基礎知識です。既に系統では優良な事業用地の熾烈な奪い合い 、から複雑化し長期化する系統接続プロセス 、そして農地法・森林法等の許認可リスク や各種契約交渉といった、数多くの法務・実務上のハードルが存在します。
これら複雑な諸問題を理解するためには、まずは系統蓄電のビジネスそのものや、法律、契約の基礎知識などが必須となります。そこで「事業戦略」と「開発実務」にまたがる知識を横断的に網羅する講座として、初の実施となります。
第1部では、3つの主要電力市場の制度と収益構造を解説し、事業の根幹となる「儲けの仕組み」を学びます。続く第2部では、プロジェクトの土台となる用地取得・系統接続の実務から、土地売買契約、EPC契約、蓄電池供給契約(BSA)といった主要契約を概況しながら、業界人に必要な必須リテラシーを解説します。
このような課題をお持ちの方へ
- これから系統蓄電ビジネスへの新規参入を検討されている事業開発担当者の方
- 電力市場の価格変動(ボラティリティ)への理解を高めたいが、自力では限界がある方
- 事業用地の確保や系統接続の手続きに対して難しいイメージがあり、法務・実務上の留意点を学びたい方
- 土地選定の失敗 、登記に残る古い抵当権 、契約タイミングの逸機 といった実際のリスクをイメージしたい方
- 系統接続など実務への理解を向上させたい方
開催形式
IVE配信(Zoom)
実施日程
2025年11月14日(金)10:00~ 15:30
当日の流れ
●第1部:10:00~11:30 / 11:50~13:20
↓
休憩:13:20~14:00
↓
●第2部:14:00~15:30
講座カリキュラム
【第1部:事業戦略編】
最新動向から読み解く 系統蓄電ビジネスの事業戦略
~激変する電力市場の制度・収益構造と事業リスクの徹底解説~
1. 系統用蓄電池ビジネスの基礎(定義・目的・ビジネスモデル)
1.1. 系統用蓄電池の定義と役割
・ 事業者側設置モデルと需要家側設置モデルの違い
・系統直結型と再エネ併設型の運用目的(市場収益最大化、インバランス・出力抑制回避)
1.2. 事業の収益構造とコスト構造
・3つの主要市場(卸電力・需給調整・容量)からの収益モデル
・コストの全体像(資本費、運転維持費、電力調達費など)
1.3. 主要ビジネスモデルの類型と比較
・ フルマーチャント型:ハイリスク・ハイリターンな市場取引モデル
・長期脱炭素電源オークション型:20年間の安定収益モデル
・トーリング型:固定料金で収益見通しが立てやすいモデル
2. 主要3市場の制度と収益機会の詳解
2.1. 卸電力取引市場とアービトラージ取引
・スポット市場の取引の仕組み(ブラインド・シングルプライスオークション)
・ 事業機会の源泉:再エネ大量導入による1日の価格差(ボラティリティ)の劇的な拡大(4円→20円)
2.2. 需給調整市場の仕組みと動向
・ 調整力(ΔkW)と電力量(kWh)の価値を取引する仕組み
・ 5つの商品区分(一次~三次②)とそれぞれの要件
・市場の課題:募集量不足と政府による価格低減措置(募集量控除)
2.3. 容量市場と長期脱炭素電源オークション
・ 容量市場:4年後の供給力(kW)を取引し、価格変動リスクが高い市場
・ 長期脱炭素電源オークション:市場収益の9割還付と引き換えに20年間の固定収入を確保する制度
3. 事業開発に不可欠な制度と将来の事業環境
3.1. 系統接続ルールと最新動向
・接続検討申込の急増と連系待ちの長期化という課題
・ 空押さえ防止に向けた系統アクセス手続きの規律強化
・順潮流(充電)側の系統混雑問題と対策(N-1充電停止装置、ノンファーム型接続)
3.2. 補助金制度の活用動向
・主要な補助金(SII、東京都)の概要
・ 小売電気事業者や再エネデベロッパーの台頭といった申請者のトレンド
3.3. 将来の事業環境に影響を与える重要トピック
・ 電力需要:データセンター等DX・GXによる需要増加トレンド
・再エネ/原子力の導入動向と、火力発電のフェードアウトが市場価格に与える影響
・kWh・ΔkW同時市場:需給調整市場・スポット市場を一体運用する将来の市場設計変更
【第2部:開発実務編】系統蓄電プロジェクト開発の法務と実務
~系統接続・用地取得の留意点から主要契約の交渉ポイントまで~
1. プロジェクトの土台作り:用地取得と開発許可
1.1. 開発の成否を分ける「系統接続」と「用地」の連動性
・ 系統接続とは
・系統の「空き容量」と「先着優先ルール」
・ 実務上の留意点 – 土地の権原確保のタイミング
1.2. 用地取得の実務
・事業用地の探し方
・ 土地の権利に関する法務デューデリジェンス
・許認可に関するリスク(農地法・森林法など)
・ 失敗事例から学ぶ
2. プロジェクトの具体化:主要契約の交渉実務
・2.1. 土地売買契約・借地契約
・土地売買契約
・借地権設定契約
2.2. 蓄電池供給契約(BSA)
・実務上の特徴
・ 主要な確認項目(性能保証・製品保証/所有権・危険負担の移転時期)
2.3. EPC契約におけるリスク分担の交渉術
・責任分界点(Interface)のリスク管理
2.4. アグリゲーション契約の設計
・運用方針の確認
・リスク分担
・報酬の体系
講師紹介
【第1部担当講師】
早矢仕 廉太郎 氏
株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門シニアマネージャー 大阪大学大学院前期博士課程修了。株式会社日本総合研究所に入社。経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会に出向。その後帰任し現在に至る。入社から一貫して環境・エネルギー分野に関するコンサルティング業務に従事。経産省時代は、容量市場の制度設計をはじめとして電力・ガス市場の制度設計を担当。帰任後も電力・ガス政策の動向を抑えつつ、再エネ発電事業、系統用蓄電池事業に関する各種リスク評価、事業性検証を支援
【第2部担当講師】
玉川雅文 氏
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)
弁護士
当事務所のファイナンス&プロジェクトグループに所属。プロジェクト・ファイナンス、買収ファイナンス等のストラクチャード・ファイナンス案件を中心に、金融法務全般に従事する。2017年9月より2018年7月まで、ベーカーマッケンジーのシカゴオフィスに出向後、東京オフィスに復帰。東京弁護士会に所属し、ニューヨーク州弁護士資格も有する。 取扱業務 金融法務、その他企業法務一般。特に、プロジェクトファイナンス、PFI/PPP、リースファイナンス、買収ファイナンス、各種証券化・流動化案件に伴う各種契約書の作成、交渉、及び法務アドバイザリー業務に数多く携わる。 主要実績 太陽光、風力、水力、バイオマス等、再生可能エネルギー発電事業において、金融機関又は事業者を代理。 米国内の複数の風力発電プロジェクトにおいて、事業者を代理(デューディリジェンスの実施を含む)。 空港コンセッションをはじめとする各種コンセッション事業並びに学校施設、市民会館及び病院等のPFI案件等、多数のPFI/PPP案件において、事業者、金融機関又は公的機関を代理 太陽光発電事業、水力発電事業の買収案件において金融機関を代理。 MBO、LBOに係る買収ファイナンス案件において、金融機関を代理。 不動産等の流動化・証券化案件において、法的アドバイスを提供。 証券取引に係る集団損害賠償請求訴訟、金融商品を巡る紛争処理などを担当。 著書・論文 「World Legal & Business Guide No. 4ブラジル」『Business Law Journal』(共著、レクシスネクシス、2011年7月号) 「米国PPP制度の特徴と最新動向-本邦PPP制度との比較を踏まえて」(共著、海外投融資情報財団、2017年11月号)